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238話 誤算

last update publish date: 2026-08-28 10:38:06

着替えを終えた私と遼大が賀神さんの前に戻って来た時には、その部屋には加山良江も来ていた。

「来ていたのね」

私がそう言うと、加山良江は微笑んで言う。

「湊様がすぐにホテルの部屋に行くようにと、そう仰いましたので」

そう言われて私は遼大と顔を見合わせる。

何かあったのかもしれない。

私たちは部屋のソファーにそれぞれが座り、状況の整理をすべく顔を合わせた。

「まず、八重樫一晟だが」

遼大がそう口火を切る。

「彼はEMSOの監査統括理事長だ。俺を蹴落とそうとしている反高嶺派の筆頭である本宮啓二の上司にあたる人物で、政財界や医療関係の大物とも太いパイプのある人物だ」

遼大がそう言ったのを加山良江がPCに打ち込んでいく。

「そして、一番、重要なのは」

遼大がそう言って私を見る。

「俺と燈、そして八重樫一晟には因縁がある」

遼大がそこまで言った時、部屋のチャイムが鳴る。顔を見合わせた私たちの中で賀神さんが立ち上がる。

「私が出ます」

そう言って部屋の扉を開けに賀神さんが向かう。

「因縁、ですか」

加山良江がそう呟く。

「あぁ、そうなんだ。燈が五年前にEMSOに来た時に、ちょっとした意見のぶつかり
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  • 跪くのはあなたです 流産の夜、私を選ばなかった夫は五年後、後悔する   235話 八重樫一晟

    セキュリティー棟を出て歩きながら、考える。これで愛沢くるみの悪意が初めて確固たるものとなって、俺の目の前に現れた。今までは実際の実行犯は他に居て、愛沢くるみが実際に直接手を下す、なんて事は無かったのだ。それが今回、愛沢くるみ本人が悪意を持って燈の背を押したという映像を手に入れる事が出来た。これは大きな成果だろう。聖カトリーナの病棟の方へ戻ると、視界に見慣れた三人組が入って来る。高嶺さんと燈と賀神さんだ……そう思った時、もう一人、居る事に気付く。愛沢くるみだ。(燈たちに話しかけている……?)そう思いながら俺はその光景を見ていた。愛沢くるみと高嶺さん、燈の間に、遮るように賀神さんが立ち、愛沢くるみに背を向けて、俺の居る聖カトリーナの入り口の方へ促している。(一体、愛沢くるみは何が目的なんだ?)燈の背中を押して、刃の方へ押し出したくせに、その事をしらばっくれて、俺に嘘をついた女。更に俺のオフィスに勝手に入り込み、何か探るような素振りを見せ、金の無心までも図々しくしようとした……こうして改めて見直すと、今まで俺はどれだけ曇った目で愛沢くるみを見ていたんだろうかと思う。どうせどこにも逃げる場所なんて無い。愛沢くるみの最大のパトロンであった千堂彰は当局に拘束されているし、チマチマと金を巻き上げていた実弟の波多野優斗は新田豊によって助け出され、俺たちの側へ来ている。俺自身は愛沢くるみの財布にはならないし、森崎家は愛沢くるみから距離を取っている状況だ。つまり、誰も愛沢くるみの味方は居ない事になる。包囲網が愛沢くるみを追い詰めている、その手応えがあった ―― その時までは。◇◇◇賀神さんに促されるように私と遼大が歩き出す。愛沢くるみはそんな私たちを恨めしそうな目で見ている。この状況で、以前のように可憐な自分を装っても、誰も相手にしない事は愛沢くるみも分かっているのか、ただただ私たちを見ているだけだった。(スマートな引導の渡し方をするのね)私は賀神さんを見てそう思う。歩き出した時、不意に遼大のスマホが鳴る。遼大がスマホを取り出し、画面を私に見せる。「乙藤のお爺様からだ」そう言って遼大が電話に出る。そう言えば乙藤のお爺様が本宮啓二を足止めしてくれているんだっけ、そんなふうに思っていた私は遼大の話し声を聞いて、少し戸惑った。遼大の声のトーンが低い。「

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